大阪市淀川区

ホテルへの用途転用により実現した、空きビルの有効活用と資産価値の再生

SERVICE
空きビル再生
KEYWORD
空き物件の価値向上
SOLUTION
事業提携・建築
PROJECT
ホテル再生プロジェクト
ホテルへの用途転用により実現した、空きビルの有効活用と資産価値の再生
PROBLEM

空き区画の有効活用と既存建物の制約が課題

この案件は、大阪市塚本にあるビルの3階、かつて小規模店舗が並ぶ雑居フロアだった。オーナーはビルを購入して以来、空き区画やテナントの入れ替えに悩まされ、空賃料をどうにかしたいと考えていた。遊休フロアをファミリー向け宿泊施設として収益化する計画は有効だったが、室内は全体的に老朽化が進んでおり、そのまままで宿泊施設とするには不十分であった。こういった既存建物の制約を踏まえた慎重な検討が必要だった。

OUTCOME

BRO-ROOMモデルを基盤にした動線・設備計画でホテルへ再生

オーナーが、賃貸住宅向けIoTサービスや不動産活用モデルを手掛ける株式会社ブロードエンタープライズの賃貸フェアに参加したことをきっかけにホテル改修の話が具体化し、美想空間が施工を担当することとなった。 リビング・ダイニングを中心とした動線を再構築し、清掃性の優れた設備を選定。天井高の制約がある中でも広がりを感じられるよう、空間計画と照明計画を工夫し、それに加えてメンテナンス性と長期利用も意識した仕上げとした。また、オーナーにとっては、株式会社ブロードエンタープライズのBRO-ROOMモデルを基盤とした新たな資産活用の一例となった。

リビング・ダイニング

リビング・ダイニングは宿泊者が集まる中心空間として計画。もともと3区画に分かれていたフロアを1区画にまとめ、広さを確保した。

既存の柱や梁の位置を活かしつつ、天井高の制約を意識しながら可能な限り高さを感じられるよう設計。素材の面においては、デザイン性に加えてメンテナンス性の良い材料を選定し、併せて照明計画を丁寧に行うことで、全体的に落ち着く空間を目指した。その結果、ファミリーなどの大人数利用でも圧迫感を感じにくく過ごしやすい空間となった。

動線面では、リビング・ダイニングから寝室、また、キッチン・浴室・サウナへスムーズに移動できるよう分かりやすく整理。複数人が同時に利用しても窮屈さを感じない設計とした。

家具は可動式を中心に配置し、宿泊人数や用途に応じて柔軟にレイアウト変更が可能。小さな子どもが走り回っても視界が確保しやすい開放的な空間に仕上がった。

キッチン

キッチンはミラタップ製を採用。清掃性と耐久性を重視し、ファミリー層がいろいろな場面で使用できる様々な食器や調理器具を収容できる収納量を確保している。

キッチンの配置はダイニングとの距離感を考慮し、配膳や片付けがしやすい位置に設置した。壁面には清掃しやすい壁材を使用し、水はねや汚れへの対応がスムーズな仕様となっている。

設備計画は運営側のメンテナンス性も意識した設計で、長期的に使用しやすいことを意識した。実用性と効率性を両立したキッチン空間となっている。

寝室

寝室は大人6人・子ども4人を収容できる構成。運営会社から要望のあった「おこもりベッド」を適応し、カプセルブースとダブルベッドブースを組み合わせ、空間を有効活用した。

子ども用カプセルはシングルサイズのため、大人でも狭い空間を好む利用者には対応可能。ベッド間のスペースを確保し、スーツケースなどの荷物を置くことができるようにした。

また、カーテンを設置することで空間を仕切って使用することができるようにしたり、遊び足りない子供達用に雲梯を設置したりなど、寝るだけでなく、さまざまな使用方法ができる空間とした。

洗面室

洗面室には引き出し付き洗面台を導入。複数人が同時に利用する想定で、洗面台の広さを十分に確保し、浴室・リビング・ダイニングと近接させ、移動がスムーズになるよう動線を整理した。

既存配管との取り合いを調整し、限られたスペースを最大限活用している。人数分のアメニティを収容することが可能。

浴室

浴室はハーフユニットを採用することで、住宅向けのフルユニットとは違った非日常空間を味わえるデザインに仕上げた。既存建物の制約下でも施工しやすいうえに、防水性にも優れる仕様。

室内はデザイン性を確保しつつも、清掃しやすい仕上げ材を選定した。

また、照明や換気扇の配置では、既存梁や配管との干渉を避けながら設計を行った。

サウナ室

宿泊施設として付加価値を高めるポイントとして運営会社から要望があったサウナ室。今回は檜貼りの造作仕上げとした。コンパクトながら熱効率を高める施工を意識して行い、最大85℃まで到達可能な性能を実現した。

サウナ室への動線は、浴室や洗面室と近接配置とした。安全性を考慮し、換気計画や木材の仕上げにも注意を払っている。

限られた面積の中で、宿泊施設として付加価値を高める最大の要素となった。

その他設備・動線

当初の計画ではアスレチックネットなどの遊具要素も含まれていたが、安全性や維持管理の観点から見送り、シンプルな構成とした。

スイッチやコンセントは宿泊者の利便性と清掃スタッフの作業効率を考慮し配置。

動線設計は、宿泊者が迷わず各部屋へ移動できるシンプルさを重視すると同時に、運営スタッフの清掃や点検作業が効率的に行える配置とした。

BRO-ROOMモデル(*1)初のホテル改修案件

完成後、大人10人で動線確認した際も、狭さは全く感じなかった。リビング・ダイニングを中心に、寝室・キッチン・浴室・サウナへスムーズに移動でき、ファミリーやグループでの滞在を前提とした設計意図が十分に機能していた。

今回のプロジェクトは、株式会社ブロードエンタープライズ(発注)、物件オーナー(所有)、運営会社(運営)、美想空間(施工請負)の4者が関わる構造で進行した。

それぞれに明確なメリットがあり、オーナーは遊休フロアの収益化、運営会社は管理しやすい動線・設備構成、そして株式会社ブロードエンタープライズにとっても、BRO-ROOMモデル(*1)における初のホテル改修案件として意義ある取り組みとなった。

美想空間としても、こういった枠組みは初の取り組みであり、今回得た経験値は大きい。株式会社ブロードエンタープライズと美想空間は、すでに次の案件も兵庫県城崎で進行中。

今回の塚本案件は許可手続きを経て2025年9月末から本格運営がスタートする予定だ。

(*1)BRO-ROOM:https://bro-room.com/

VOICE

野本 真由[プランナー]