大阪市港区築港

【事業スキーム|KLASI COLLEGE】築70年・建替え前提ビルを「解体せずに事業化」した官民連携×サブリースモデル

SERVICE
事業スキーム空きビル自社運営
KEYWORD
長期安定収益モデル
SOLUTION
事業構築・建築・企画運営
PROJECT
KLASI COLLEGE
【事業スキーム|KLASI COLLEGE】築70年・建替え前提ビルを「解体せずに事業化」した官民連携×サブリースモデル
PROBLEM

解体か放置か──出口が描けない築古ビル

対象建物は1952年築の旧事務所ビルで、老朽化に加え、度重なる増改築により動線は複雑化し、構造的な合理性も低下していた。既存不適格、借地権による用途・建替え制限などの条件が重なり、フルリノベーションにも建替えにも制約がかかる状態で、事業判断を行いにくい物件だった。解体費は約4,700万円と見積もられ、建物を残す合理性は見出しづらい一方、解体しても高い収益改善が見込める立地ではなく、更地化しても出口が描きにくい。通常の不動産評価では「手間がかかる割にリターンが薄い案件」とされやすく、投資対象から外されがちな条件が揃っていた。

OUTCOME

解体回避で経済合理性をつくる──サブリース×拠点化モデル

建替えではなく既存建物の活用を前提に、複合施設「KLASI COLLEGE」へコンバージョン。美想空間が年間600万円・10年のサブリース契約を締結し、総工費約4,000万円を投下して企画・設計・運営まで一体で実装。解体費4,700万円に対して、サブリース総額は6,000万円となり、オーナー側は解体せずとも経済合理性を確保できる構造とした。建物単体の収益化に加え、拠点化によるエリア価値の引き上げを同時に狙う事業スキーム構築に成功。

事業概要|数値で見るKLASI COLLEGE

KLASI COLLEGEは、大阪市港区・大阪港駅徒歩2分に立地する1952年築のRC造地下1階地上3階建て、建築面積約1,300㎡の旧事務所ビルを、飲食、物販、事務所兼ショールーム等を内包する複合施設へ転用したプロジェクトである。

運営・設計は株式会社美想空間が担い、総工費は約4,000万円。資金調達は金融機関からの融資を中心に構成し、オーナーとは年間600万円×10年のサブリース契約を締結することで、事業者側が運営リスクを引き受ける代わりに企画・設計・運営を一体でコントロールできる体制を構築している。

施設は単体の賃貸収益を生む拠点であると同時に、リノベーション関連事業のショールーム機能を内包し、本業への送客装置としても機能する設計とした。

開業後はマーケットや展示、ワークショップ等の実装により年間延べ約1万人規模の来場者を獲得し、施設単体の収益に加えて、周辺エリアへの関係人口の創出を役割も担っている。

物件名:KLASI COLLEGE
所在地:大阪府大阪市港区(大阪港駅 徒歩2分)
築年数:1952年築
従前用途:事務所
改修後用途:複合施設(飲食店、物販店、事務所兼ショールーム等)
構造・規模:RC造 地下1階/地上3階 建築面積 約1,300㎡
総工費:約4,000万円
資金調達:金融機関からの融資
工事費内訳:建築40%/外構30%/設備30%
契約形態:サブリース(年間600万円 × 10年)
運営・設計:株式会社美想空間
年間延べ来場者:約10,000人
役割:建物単体の収益拠点+エリアリノベーションの起点

KLASI COLLEGE1階に併設するcafe

なぜ、この物件だったのか

このプロジェクトは、立地優位性や短期利回りを前提に選定した案件ではなく、一般的な不動産投資の文脈では回避されやすい条件を前提に成立させたモデルである。

対象建物は既存不適格でフルリノベーションが難しく、借地権により活用の自由度が低い上、解体費が約4,700万円と高額だった。オーナー側は当時その予算は確保しておらず、建替えを行うには経済合理性が成立しにくい状況にあった。

そこで、年間600万10年間活用のサブリースを提案。そうすることで、オーナー側は解体コストを上回る収入が確保され、結果として極めて合理的な選択肢となる。

加えて、港湾機能の衰退以降、商業機能や行政機能が移転し地価が下落してきた築港エリアは競合が少なく、短期的な需要は弱い一方で、大阪中心部へのアクセス性や将来的な都市動向を踏まえると中長期での再評価余地がある立地だった。

建物単体の再生ではなく、拠点化を起点に周辺物件の取得・賃借へ展開する前提であれば、単体利回りの低さをエリア展開によって補完できると判断した。

KLASI COLLEGEから3年後、同エリアにOPENしたシェアオフィスCHIKKO TARMINAL

施工・運営

施工・運営は、コストコントロールと事業性の両立を前提に設計。
「あそびのある暮らしを提案するリノベーションショールーム」をコンセプトに、ショールーム、カフェ、美容室、物販(書籍)などをを組み合わせた複合用途とし、施設自体を実物大のプロダクトとして提示する構成とした。

度重なる増改築により迷路状につながっていた3棟の構成は、回遊性を持たせた動線に整理し、来訪者が館内を巡回する中で複数の用途に自然接触する設計とした。
天井高約3,700mmの大空間は、ロフトによる空間分節、既存設備ダクトの意匠化により撤去・更新コストを抑制しつつ体験価値を担保している。

法規面では、既存不適格の前提を踏まえ、事務所用途を主用途とする複合用途として整理し、飲食店・美容室は200㎡以内で区画することで用途変更申請を回避、誘導灯・自火報の更新など必要最小限の設備更新で合法範囲内に収めた。

運営面では、企画段階からテナントを巻き込み、竣工時点での満床化を前提としたリーシングを実施し、開業後はイベントやマーケットを通じて施設単体の集客と本業への送客を同時に実現する構造を実現した。

建築知識2022年7月号にも掲載された

成果と出口戦略

このプロジェクトの成果は、建物単体の賃料収入に加え、拠点化による人流の創出と、周辺不動産の活用余地を可視化できた点にある。
サブリース構造により、オーナー側は解体を回避でき、事業者側は初期投資を回収しながら周辺の空きビル・空き店舗へ展開できる体制を構築した。
また、マーケットやワークショップの開催を通じて、築港エリア南側に年間延べ来場者数約1万人という継続的な来訪動線を生み出し、エリアの潜在需要を可視化させている。

出口戦略は、建物単体の売却を前提とせず、拠点を起点に段階的に物件を再生し、複数事業の集合体として全体の価値を高めていく設計としている。
このプロジェクトは2020年度のグッドデザイン賞を受賞しており、単なるリノベーション事例ではなく、既存ストック活用とエリア再生を組み合わせた事業モデルとしても一定の社会的評価を得た。

解体費が高額で建替えによる収益改善が見込みにくい築古非住宅や、既存不適格・借地権などの制約条件を抱える物件でも、拠点化とエリア展開を前提に組み立てることで事業化の余地が生まれることを示したケースとなった。