【宮崎市池内町】『IKEUCHI150 PROJECT』が育てる新しい”暮らしの場”― 仮移住から始まった古民家再生 ―

2026.7.1
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【宮崎市池内町】『IKEUCHI150 PROJECT』が育てる新しい”暮らしの場”― 仮移住から始まった古民家再生 ―

宮崎市・池内町にある、築約150年の古民家。
長い年月を重ねたこの家では今、多くの人が集まり、床を剥がし、壁を塗り、ご飯を囲みながら、新しい「暮らしの場」をつくっています。

その名も『IKEUCHI150 PROJECT』。
一見すると、古民家をDIYで再生するプロジェクトですが、実際に現場を訪れて感じたことは、このプロジェクトはただの古民家再生ではないということ。

今回は、今宮崎で進んでいるこの『IKEUCHI150 PROJECT』と、そこで生まれている、「人と人とのつながり」や新しい「暮らしの場」をご紹介します。

はじまりは、一人の移住者との出会い

この古民家で新しい暮らしを始めるのは、長野県から宮崎へ移住してきた和地さんです。実は、和地さんが最初からこの古民家に住む予定だったわけではありません。

和地さんと美想空間の最初の接点は、美想空間が運営する仮移住施設”TRIAL STAY Kisaki BEACH”でした。
「宮崎に住んでみたい。」そんな想いを持って宮崎へやってきた和地さんは、まずはこの仮移住施設で暮らしながら、地域を知り、人と出会い、自分らしい暮らし方を少しずつ探していかれました。

和地さんは、もともとは長野で農業を営みながら、休日になると2〜3時間かけて海へ通うほどのサーファー。長野には海がないので、30年くらい愛知や静岡まで2〜3時間かけて通っていたそうです。
そんな暮らしを続ける中で、「農業を辞めるタイミングで、海の近くで暮らしたい」と考えるようになり、何度も訪れていた宮崎への移住を意識するようになったそうです。

「宮崎は最高ですよ。何もないけど、それがいい。」
そう語る和地さんは、宮崎の風土に惹かれ、ここでの生活を思い描くようになりました。が、いざ住まいを探そうとマンスリー物件を探してもなかなか見つからず。困ってサーファー仲間に相談したところ、「こんな場所があるよ」と紹介されたのが、美想空間が運営する仮移住施設だったそうです。
「紹介してくれた友達も、その施設の話を聞いたばかりだったみたいで。本当にタイミングでした。」と。

移住を考える人にとって、本当に難しいのは家を探すことだけではありません。どんな人がいるのか。どんな暮らしがあるのか。自分はこの土地でやっていけそうか。実際に暮らしてみなければ分からないことがたくさんあります。
だからこそ、美想空間は「いきなり移住する」のではなく、「まず暮らしてみる」という選択肢が必要だと考え、仮移住施設”TRIAL STAY Kisaki BEACH”をつくりました。

そして、和地さんがその先で出会ったのが、池内町に残る一軒の古民家だったのです。

▽仮移住施設”TRIAL STAY Kisaki BEACH”の詳細はこちらの記事をご覧ください!

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「TRIAL STAY Kisaki BEACH」の外観
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宮崎市の移住センターとも連携しながら運営しています。

「壊す」のではなく「次に繋ぐ」という選択

池内で出会ったこの家は、代々受け継がれてきた築約150年の古民家です。所有者さんにとって、思い出がたくさん詰まった大切な場所。住む人がいなくなり、維持していくことが難しくなっていましたが、それでも、「できれば壊したくない」という思いを抱かれていました。

そんな所有者さんの想いと、「宮崎で暮らしたい」という和地さんの想いがつながり、このプロジェクトは動き始めました。

とはいえ、築150年の古民家を一般的なリノベーションで再生しようとすると、多額の費用が必要になります。そこで採用されたのが、「DIY」という方法でした。

そして、ここからがこのプロジェクトの最大の特徴。
ここで行われているDIYは、単に工事費を抑えるためのDIYではありません。「関わる人みんなで手を動かしながら家を再生する」という、もう一つの大きな目的があります。

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和地さんと現地調査に訪れた際の様子

「古民家×コミュニティ大工」というかけ合わせ

さて、このプロジェクトをリードしてくださっているのは、鹿児島を拠点に活動するコミュニティ大工・加藤潤さんです。加藤さんは、自らを「コミュニティ大工」と名乗られています。

一般的な大工が「家をつくること」を仕事とするなら、コミュニティ大工は、人が集まり、一緒に家をつくる過程そのものをデザインされています。

そんな加藤さんに、取材で「コミュニティ大工とは何ですか?」とお聞きすると、意外な答えが返ってきました。「実は、僕がやっていることは何も新しいことじゃないんですよ。」と。
「昔は家を建てるとなったら、近所の人も手伝って、大工さんもいて、施主さんも一緒になってつくっていました。だからコミュニティ大工って、昔に戻っているだけなんです。」その言葉を聞き、現場に流れる空気感に妙に納得しました。

初めて会う人同士なのに、自然と「そこ持ちますね」「こっち押さえてもらえますか」と声を掛け合う姿。誰かが失敗すれば笑い合い、作業が合間に一緒にご飯を食べる。その距離感は、どこか昔の共同作業を思わせるような温かさがありました。

加藤さんは、この考え方を「DIYではなく、DIT(Do It Together)」と表現されていました。”自分でやる”のではなく、”みんなでつくる”。
床を剥がしたことがない人も、インパクトドライバーを初めて持つ人も、建築学生も、近所の方も、移住者も。誰もが現場に入り一緒に手を動す。
「床はがしていくよー!」
「床下ってこんな風になってるんだよ。」
そんな加藤さんの声に、参加者のみなさんが自然と集まり、一つひとつの工程が学びになり、会話になり、人との距離を少しずつ縮めていく時間になっているようでした。

実は加藤さん自身も、最初からプロの大工だったわけではないそうです。もともとは埼玉でDIYを楽しむ会社員。41歳で鹿児島へ移住したものの、住める家が見つからず、自ら空き家を借りて直したことが始まりだったそうです。

すると、今度は移住希望者から「家がない」と相談されるようになり、「じゃあ、一緒に直しましょう。」とやっていったその積み重ねが、現在の活動につながっているそうです。
「僕は空き家再生のプロじゃないんです。でも、やりたい人がいて、一緒にやっていったら、意外とうまく回っていった。」と。

さらに印象的だったのが、「完成を決めない建築」という考え方。
「依頼者さんも、実は完成形が見えていないことが多いんです。だから最初に全部決めて見積もりを出すんじゃなくて、まず4日やってみる。このくらいでここまでできるんだと分かれば、『じゃあ次はここまでやろう』と少しずつ決めていくんです。」
最初からすべての答えを決めるのではなく、実際に手を動かし、その場で対話を重ねながら暮らす場をつくっていく。だから、加藤さんの現場では、家づくりと同時にコミュニティも育っていくのか、と感じました。

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『IKEUCHI150 PROJECT』説明会の様子
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第1回ワークショップでは床を剥がし…
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第3回ワークショップでは床を張りました!

▽加藤さんの活動はこちらからご覧いただけます!

現場飯がつくるもの

また、現場を訪れて、もう一つ印象的だったことがあります。それは、作業がひと段落すると、みんなで食卓を囲むこと。加藤さんは、「出会った仲間とは、同じ釜の飯を食う」その時間をとても大切にされていました。

取材当日も本当にさまざまな参加者さんが集まっていました。水道屋さん、不動産会社を営む方、古民家を所有している方、DIYが初めてという方、そして地域のみなさん。年齢も職業も、この場所へ来た目的も、それぞれ違うようでした。

そんな一期一会の集まりでもあるからこそ、同じ釜の飯を食うことで生まれる空気感があるのだな、と感じました。
実際、取材中も、インタビューの横では参加者さんがお昼ご飯を囲み、和やかに会話されていました。
そして実はわたしも、ちゃっかり、加藤さん特製ぜんざいをごちそうになりました!めちゃくちゃ美味しかったです、加藤さんごちそうさまでした!

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加藤さん特製ぜんざい、なんとトッポギ入り!めっちゃ合う!美味しかったです!

DIYのワークショップというと、「教える人」と「教わる人」がはっきり分かれているイメージを持つ方もいるかもしれません。でも、この現場は少し違う。もちろん加藤さんが作業の進め方を教えてくださいますが、参加者同士も自然と教え合い、助け合いながら進んでいる。その空気感がとても心地よく感じられました。

そして、参加者さんが、「自分の家じゃないのに、愛着が湧いてくるんですよ。」と話してくださりました。
なるほど、完成する頃には「和地さんの家」であると同時に、「自分も関わった場所」という感覚が、それぞれに実感として残る。一緒に手を動かし、一緒にご飯を食べた時間が、人とのつながりも、この家への愛着も育てていく。
「現場飯」は、このプロジェクトの醍醐味をより強くする、大切な時間なのだなぁ、と感じました。

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これは焼きそばでしょうか…おいしそうですー!
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加藤さん(左)和地さん(右)、お忙しい中ありがとうございました!

宮崎で育つ新しい循環

美想空間はこれまで、宮崎で仮移住施設”TRIAL STAY Kisaki BEACH”をはじめ、空き家・空きビル活用など、地域と連携したさまざまな取り組みを続けてきました。
今回取材した『IKEUCHI150 PROJECT』は、その一つのプロジェクトであると同時に、それぞれの取り組みがつながり始めたプロジェクトだと感じています。

仮移住施設で宮崎と出会った和地さんが、この土地で暮らすことを決める。住む人がいなくなった古民家を、「壊す」のではなく「次の世代へつなぎたい」と願う所有者さんがいる。そこへ加藤さんの「みんなでつくる」という思想が重なり、地域の人や移住希望者、学生、職人など、多様な人たちが自然と集まってくる。

誰かが最初から描いた完成図ではなく、それぞれの想いが少しずつ重なり合った結果として、このプロジェクトは進んでいます。
古民家を再生することが目的ではなく、人が出会い、関わり、次の暮らしへとつながるその循環そのものが、このプロジェクトの価値です。

2026年秋ごろの完成を目指して進む『IKEUCHI150 PROJECT』。
その頃、この家には新しい住まい手である和地さんが暮らしているだけでなく、この場所に関わったたくさんの人たちの思い出や愛着も、積み重なっているはずです。

完成した姿を見るのも楽しみですが、それ以上に、今後この場所からどんなつながりや、新しい暮らしが生まれていくのかがとても楽しみです!
これからも、その歩みを見届けていきたいと思います。

▽美想空間の宮崎でのその他の活動はこちらからご覧ください!


2026.6月、UMKテレビ宮崎「U-doki」が弊社代表 鯛島を密着取材してくださり、Youtubeにアーカイブが公開されました。

宮崎事業で私たちが取り組んでいる、
・新公民館VOL
・空きビル再生
・古民家再生・DIYワークショップ
・移住支援
などの活動を、とても分かりやすく紹介していただき、宮崎事業の全体像をご理解いただける内容になっています。
UMKテレビ宮崎「U-doki」Youtubeチャンネルより、ぜひご覧ください!