奈良県大和郡山市

歴史資源を未来につなぐ―人が集い賑わいを生む城下町リノベーション

SERVICE
エリアデベロップメント
KEYWORD
官民連携・地域創生
SOLUTION
事業構築・建築・企画運営
PROJECT
大和郡山市エリアリノベーション
歴史資源を未来につなぐ―人が集い賑わいを生む城下町リノベーション
PROBLEM

空き家と歴史資源の眠りが、まちの未来を閉ざしていた

大和郡山市は奈良県のほぼ中央に位置し、城下町としての歴史と文化を色濃く残すまち。しかし、少子高齢化や人口減少の影響で、中心市街地の空き家や遊休不動産が年々増加していた。これらの建物は老朽化が進み、使い道が見つからないまま放置されるケースも多い。観光資源としてのポテンシャルは高いものの、観光客が日常的に訪れたくなる仕掛けや、地域住民が集い交流する場は不足していた。このままでは、まちのにぎわいは失われ続け、歴史ある景観や文化が次世代に受け継がれないという危機感が高まっていた。

OUTCOME

民間主導と官民連携で、まちの心臓部を再生する

美想空間代表・鯛島が発起人となり設立した「大和郡山まちづくり株式会社」と大和郡山市は、官民連携による本格的なリノベーションまちづくりを推進。歴史的建物や空き家を単なる修繕にとどめず、新しい価値を持つ複合施設や交流拠点へと再生してきた。2020年以降、町家や長屋、商店街の空き物件を活用し、飲食・物販・交流スペースが融合する新しい商いの場を次々と創出。地域資源の眠りを覚まし、住む人も訪れる人も交わる循環を生み出すことで、城下町の再生が加速している。

豊かな歴史資源と新しい可能性が交差する奈良県大和郡山市。
美想空間は、同市と共に「リノベーションまちづくり」を通じて、地域の方々やプロジェクト関係者と協力し、町の魅力を引き出し新しい価値を生むための様々な活動をサポートしてきた。

大和郡山市で奈良県内初の「リノベーションスクール」開催

大和郡山市は令和元年度(2019年度)より「リノベーションまちづくり」を本格的にスタート。
2020年1月には、「第1回リノベーションスクール」が奈良県内で初めて開催され、町の魅力を再発見する多くのアイデアが生まれた。

この取り組みが2020年に設立された「大和郡山まちづくり株式会社」へと発展し、同社はその後、空き家や遊休不動産を町の資源として活かし、地域の賑わいを生み出す数々のプロジェクトを推進する拠点となっていった。

美想空間は、「第1回リノベーションスクール」ではユニットマスター(講師)として関わり、また「大和郡山まちづくり株式会社」設立の際には出資者となり、現在も美想空間代表鯛島は同社の取締役を務めている。

こうして、美想空間は、ディレクションの視点から、町の新しい未来を築く道を共に歩んでいくこととなった。

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2020年1月 記念すべき第1回リノベーションスクール

大和郡山市と大和郡山まちづくり株式会社が官民連携協定を締結

2021年4月、大和郡山市と大和郡山まちづくり株式会社は、城下町エリアの価値、利便性の向上をより一層進めることを目的として「大和郡山城下町エリアの活性化に関する連携協定」を締結。
「10年間で100店舗つくる!」を目標に、いよいよ動き出した。

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左から2番目:美想空間 鯛島/3番目:大和郡山まちづくり株式会社代表 大垣さん

第1号リノベーション物件「町家未来基地」誕生!

2021年4月、大和郡山まちづくり株式会社が手がけた第1号物件「町家未来基地」が完成!多くの方の注目を浴びる中、オープニングセレモニーが行われた。

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セレモニーの様子。たくさんの方が取材に来てくださり、注目度の高さがうかがえる。
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関係者の方々と記念撮影
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美想空間 鯛島も感無量な様子

この物件は築90年の2階建ての長屋。
市役所近くの矢田町通にあり、元々は花屋と新聞販売所だったそう。
この再生プロジェクトにより、1階には、スムージー店「Chiii(チィ)」と、スパイスカレー店「tabi tabi」が入り、加えて、レンタルルームなど地域のための多目的空間・機能も設けた。
この先、地域住民の方々の大切なコミュニティ拠点となっていくことを目指し、動き出した。

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現在の様子 すっかり町に溶け込みSNSでも大人気のお店へ。

学生2人の汗と涙の挑戦!「ワタマチテラス(ニコイチ長屋)」がついにOPEN!

2022年12月、第2回リノベーションスクールで生まれたプロジェクト「ワタマチテラス(ニコイチ長屋)」がついに完成。

近畿大大学院生2人がセルフリノベーションに挑んだこのプロジェクト。『50日後に”はそん”するニコイチ長屋』と銘打ち、ワークショップやクラウドファンディングを通して見事に町の空き家を再生させることに成功した。
若い世代ならではの創造性と行動力が見事に発揮された素晴らしいプロジェクトとなった。

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このプロジェクトの主役、勝本君と藤田君(後列右から3番目・4番目)

2人は、50日間の住み込み作業を通じて、床の板を剥がし、古材を再利用しながら、一つひとつの工程を丁寧に進めた。
ひたむきに取り組む様子は近隣でも話題となり、近隣の方とのコミュニケーションも自然と生まれた。
2人はここで、セルフリノベーションだけではなく、「まちづくり」の醍醐味を存分に感じられる時間を過ごしたことだろう。

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「今どんな感じになってんの?」と、近隣の方が入って来られることも。
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やりたかったセルフリノベーション。ひとつひとつ、コツコツと。

そして、この第2号物件で大きな課題となったのは「資金調達」だった。
古い建物を再生するには想像以上の資金が必要。
資金調達に行き詰った2人は、美想空間 鯛島のアドバイスのもと、クラウドファンディングを開始し、 プロジェクトの進行状況や夢を発信しながら支援を呼びかけた。

支援ページには、歴史ある町家に新しい命を吹き込みたい!という思いと、 若者が地域活性化に挑戦する意義が綴られ、 結果として、目標の180万円を超える支援を集めることができただけでなく、 追加のネクストゴールも達成するという大きな成果を収めた。

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実際のクラウドファンディングのページ https://readyfor.jp/projects/yamatokoriyama_hason
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2人の創造力と行動力は本当に素晴らしかった!

また、このワタマチテラスのプロジェクトは、地域の方々にも大きな刺激を与えた。
「若者の力で町がこんなに活気づくとは」との声も多数上がり、 オープニングイベントでは、町の方々とのあたたかい交流が広がった。

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マーケットイベントの様子
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「地域の公民館的機能も果たしてほしい」と、期待が高まる。

第3号物件 コネクトスペース「cotton」

2023年3月、2022年12月に完成したワタマチテラスの東側に、一般社団法人eight ぴいすコネクトスペース「cotton」が入居。

一般社団法人eight ぴいすさんは、2022年10月に開催されたリノベーションカレッジに参加され、この地に根を張っていくことを決断された。
福祉サービス事業である一般社団法人eightの、木工や紙漉きの製品を作る工房としてここを活用される。

また、今後継続的に、事業者さんとサービス利用者さんが、作業の一環として一緒にリノベーションを行い、場を整えていく予定、とのこと。

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コネクトスペース「cotton」キックオフセレモニーの様子

リノベーション・まちづくりの未来を学ぶ2日間「リノベーションカレッジ」開催

2024年3月、リノベーション・まちづくりの未来を学ぶ2日間「リノベーションカレッジ」が開催され、全国からリノベーションのプロフェッショナルが集結!2日間の盛りだくさんのコンテンツにより、参加された方々は、楽しみながら地域課題への理解を深める機会となった。

【リノベーションカレッジ メインコンテンツ】
①株式会社タムタムデザイン田村晟一朗氏による特別講演
「空き家と小商い」

②”エンタメ系まちづくり”クリエイティブバトル!
地域課題や企業課題をテーマに、内外(ホーム奈良 vs アウェイ:岐阜)のクリエイター達が、3対3の団体戦形式で自らのアイデアをぶつけ合う!

③ラジオ「リノベの時間」スペシャル公開収録!
美想空間の代表 鯛島がパーソナリティを務めるラジオ「リノベの時間」の特別企画!株式会社タムタムデザイン 代表取締役 田村晟一郎さんをはじめとするさまざまなリノベのプロを全国からお招きし、4人ごとに対談する様子を公開収録!

『オカマチ荘』の誕生とクラウドファンディングへの挑戦!

2024年6月、第4号物件となる『オカマチ荘(ハンドメイドシェアアパートメント)』のキックオフイベント、「リノベーションカレッジ・1日DIY教室」が開催された。
参加者全員で様々なDIYに挑戦し、オカマチ荘の“場づくり”を進めた。

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1日DIY教室開催にあたり、楽天をはじめとするたくさんの企業様からの協賛をいただいた。
ボッシュ(工具)、ラブリコ(DIYパーツ類)、壁紙本舗(壁紙)、織田商事株式会社(棚板)、ニッペホームプロダクツ株式会社(塗料)、DIYファクトリー、ホームセンターコーナンなど、鯛島の声に耳を傾けてくださり、手を挙げてくださった。

『オカマチ荘』は、元化粧品店だった古家をリノベーションし、ものづくりを楽しむハンドメイド作家やクリエイターが集まるシェアアトリエとして生まれ変わる予定だ。
クリエイターたちが互いに刺激を与え合い、時には協力して新しいものを生み出す空間であり、また、ただの制作スペースに留まらず、ここで生まれた作品や活動が人々をつなぎ、地域に新しい息吹を吹き込む拠点となることを目指す。

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オカマチ荘の完成イメージ図

また、この構想の実現のため、大和郡山まちづくり株式会社はクラウドファンディングへの挑戦を決めた。
代表の大垣さんは、東京・福岡で5年間設計事務所に勤め、2024年8月に地元大和郡山にUターン、現在、まちの数々のプロジェクトに全力投球中。
今回のオカマチ荘の建物も、4年前のリノベーションスクールで運命的に出会った物件。ここにぜひとも新たな命を吹き込みたいと強く願っていた。

さらに、このプロジェクトには、大和郡山市に惹かれて移住してきたデザイナー兼フォトグラファーの富谷さん(通称トミー)も管理人として加わり、2人の熱意は多くの方々の共感を呼び、クラウドファンディングは見事に成功!

現在、『オカマチ荘』は、みんなのDIYで少しずつ場づくりを進めている。

城下町の複合施設『柳町フラット』の開業

2024年9月、第5号物件となる、大和郡山城下町の柳町商店街にある元歯科医院を活用した複合施設『柳町フラット』のオープニングセレモニーが行われた。

築60年の元歯科医院をリノベーションし、カフェ、クラフトビールバー、チョコレート店、貸切サウナなどが入居した、地域住民や観光客が気軽に立ち寄れる空間の誕生だ。

オープニングセレモニーでは、オーナーさまが「空き家になり、長い時間が過ぎ、ずっと気がかりだった。それが今、みなさんのおかげで見事に生き返った。ずっと胸にあったつっかかりが、ようやく取れました。これでお墓にもいい報告ができます。本当にありがとうございました」と、感極まりながら熱い思いを語ってくださり、会場にいた全員が温かい気持ちに包まれた。

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お忙しい中駆けつけてくださった皆様。
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ご多忙の中、取材にもご対応くださったオーナー様。
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開放感たっぷりの入口と店舗看板。新旧のバランスがリノベーションならでは。
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中に入ると広がるこの空間。
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「Filament(フィラメント)」 本当に絶品。ぜひ一度食べていただきたい。
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「いろかふぇ」 カラダに染み渡るランチがいただけます。

柳町フラットが、施設名にも込めた“ふらっと”立ち寄れて“フラット”に繋がる場所として、地域の日常に根付いていくことだろう。

現在取り組んでいるプロジェクトと今後の展望

2020年から取り組んできた大和郡山リノベーションまちづくり。
現在は、昭和5年に建てられた有形登録文化財や、かつて遊郭として使われていた木造建築など、歴史的価値の高い建物の再生プロジェクトが進行中。

これまでと違い、大和郡山まちづくり株式会社を中心に、美想空間をはじめとする民間企業・国・市・金融機関が連携し、多くの眠っている建物に新たな命を吹き込むという、新たなスキームでの挑戦が始まっている。

利益も生み出す持続可能な事業として再生することで、地域全体が「三方良し」の関係になることを目指し、これからも走り続けていく。